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自分の思い描く理想で他人が幸せになる事は
不幸にする事よりももっと困難で難しい
実際にアメリカで起こったスパイ事件を元に描かれた映画です。
何不自由なく育った主人公クリスとまるでチンピラのドールトン
彼らの共通項は幼い頃からの友達であるということ。
そんな温室育ちで神学校に通っていたクリスが就職したのが
とあるアメリカの情報機関だったのですが
そこで目にしたのは理想の国家とは裏腹なダークな部分。
まだ社会というものを、世界というものの
大きさ、恐ろしさを知らない彼は幼馴染のドールトンを巻き込んで
情報売買=スパイ活動に足を踏み入れていきます。。
主題歌はデビッド・ボウイ
タイトルが「This is not America」とはモロ直球すぎです。
最近の映画の主題歌はどうでもいいタイアップが多くて
印象に残るという曲はあまりないけれど
この曲は映画のイメージそのまんまです。
クリス役のティモシー・ハットンはさておき
ドールトン役を若き日のショーン・ペンが演じているのですが
これがもう最高にいい。
なんで真面目なおぼっちゃんの主人公が
そんな不良なやさぐれ男と友達付き合い続けるんだろう?
という疑問の答えが、ショーンの演技の中にあります。
憎めない、見捨てられないキャラだから
クリスは同じ運命を辿ったのか?
私の中で答えは「否」です。
結局はクリスもドールトンを利用していただけの事。
自分の方が優れているという思いがあったから
続いていただけの友人関係、その友情は一方通行で
決して対等になるように見える事はなかった。
そんなクリス自身を象徴するかのように効果的に使われるのが
クリスと彼が飼っていた鷹とのシーン。
大切に飼われているとはいえ、
囚われの身である鷹が大空に放たれて羽ばたくワンシーン。
物語冒頭とラストで同じようなシーンをまったく対照的に描いています。
クリスが引き起こした事件は正義感の観念からすると
彼の行動が100%許せないというものではありません。
けれど、彼に友達の人生を奪い
家族や関わった人を不幸にする権利はないはず。
支配する者とされる者。
クリスが衝動的に欲したものは理想郷だったのか
本当の自由だったのか。
きっと永遠に手にする事ができないからこそ
人はそれを追い求めてしまうのかもしれない。